「科学技術への社会的期待の可視化・定量化手法」
ガイドライン

本ガイドラインは、慶應義塾大学SFC研究所「科学技術への社会的期待の可視化・定量化手法の開発」プロジェクト(研究代表:玉村雅敏(慶應義塾大学総合政策学部))が、(独)科学技術振興機構 社会技術研究開発センター (JST-RISTEX) が実施する「科学技術イノベーション政策のための科学研究開発プログラム」の平成23年度採択プロジェクトとして研究開発したものである。

本ガイドラインのねらい

社会の成熟や少子化・高齢化などの社会構造が急速な変容を遂げる中で、医療や環境、エネルギー、産業の空洞化、地域社会の安全安心などといった、多種多様な社会課題が顕在化し、いかにして取り組み、乗り越えていくかが問われている。

社会課題の解決へと前進する際に、科学技術が果たす役割は大きいが、予算の投入や、新しい技術の導入、インフラ等の構築のみではうまくいくとは限らない。社会の仕組みもあわせて変化する必要がある。科学技術分野においても、技術革新を通じてその潜在力を発揮し、社会課題解決を促進させるには、「社会イノベーション」といった、社会的な関係の変化も同時に起こることが必要である。

そこで、本研究開発プロジェクトでは、

  1. 「政策マーケティング手法」を応用した社会的期待の調査と指標化の手法
  2. 「SROI(Social Return on Investment=社会投資収益率)分析手法」を応用した社会的期待への投資効果(インパクト)の定量分析の手法
  3. 「討論型世論調査(Deliberative Polling)」を活用した社会的期待の仮説構築・検証手法

について、科学技術領域での適用・応用を検討・推進し、この3つの手法を有機的に組み合わせた「科学技術への社会的期待を可視化・定量化する手法」を研究し、政府や自治体、関係機関、シンクタンク等への導入を想定したガイドラインを開発した。

この研究開発の結果として、「エビデンス(根拠)」と「科学的な方法論」に基づいた、客観性のあるプロセスを構築する方法論を構築し、科学技術イノベーションと社会イノベーションの相乗効果を促すことを支援することをめざすものである。

統合モデル・ガイドライン

「科学技術への社会的期待の可視化・定量化手法」ガイドライン

(2014年9月・全99ページ)
目次:
0.基礎情報
 (1)研究開発の経緯
 (2)活用する方法論(概要)
 (3)統合モデルの発想
1.アウトカムの可視化と共創環境の構築(政策マーケティング手法)
 Ⅰ-1 社会課題構造分析
 Ⅰ-2 ステークホルダーマップ作成
 Ⅰ-3 最終アウトカム設定
2.協働型の定量評価プロセスの構築(SROI)
 Ⅱ-1 インパクトマップ作成
 Ⅱ-2 SROI分析
3.仮説の構築・検証(討論型世論調査)
 Ⅲ-1 仮説構築
 Ⅲ-2 仮説検証
4.ガイドライン試行例:出生前診断

解説書

「社会イノベーションの科学―政策マーケティング・SROI・討論型世論調査」
解説書

(勁草書房、2014/12)
目次:
第1章 イノベーションの考え方と政策展開
 §1 イノベーションとは何か?
 §2 科学技術とイノベーションの政策
第2章 科学技術と社会のイノベーション-社会的期待の可視化・定量化手法による新結合
 §1 社会イノベーションとコミュニティ・ソリューション
 §2 社会イノベーションの科学-科学技術への社会的期待の可視化・定量化
第3章 政策マーケティング-アウトカムの可視化と共創環境の構築
 §1 政策マーケティングとは何か?
 §2 政策マーケティングの実践事例
第4章 SROI(Social Return on Investment)-協働型の定量評価プロセスの構築
 §1 SROIとは何か?
 §2 SROIの実践事例
第5章 討論型世論調査 -仮説の構築・検証
 §1 討論型世論調査とは
 §2 討論型世論調査の実践事例
 §3 科学技術分野における活用:エネルギーと環境の選択肢に関する討論型世論調査を例として
第6章 統合モデル -社会的期待の可視化・定量化手法
 §1 統合モデルの考え方
 §2 政策マーケティングの活用
 §3 SROIの活用
 §4 討論型世論調査の活用
 §5 統合モデルの適用― 出生前診断を例として